CCUでの薬物の使い方

冠疾患集中治療室(CCU)、救急外来(ER)でよく使われる薬剤について、当CCUでの使用法について簡単に紹介しています。成書とは若干使い方が異なる点もありますが、参考程度にお読み下さい。
鎮静 CCU緊急薬 硝酸薬 カテコラミン PDEIII阻害薬 心房性Na利尿ペプチド
緊急降圧
 
鎮静(人工呼吸管理中などに)TOPへ
A.ドルミカム+ケタラール(ミダゾラム+ケタミン)
ドルミカム(ベンゾジアゼピン系鎮静薬)500mg(5A=10ml)+ケタラール50(麻酔鎮痛薬)500mg(1A=10ml) (トータル20ml)
投与方法:1ml/時で開始、最大3−5ml/時まで。
:ドルミカム−重症筋無力症、緑内障 ケタラール−脳血管障害、高血圧、脳圧亢進、重症心不全、痙攣既往
特徴:ドルミカムは脂溶性が高く、蓄積し鎮静効果が切れにくい欠点はあるが、鎮痛の必要な例には有用。
B.ディプリバン(プロポフォール)->肝代謝
ディプリバン(麻酔薬)(1ml=10mg 1A=20ml or 50ml)
投与方法:(体重÷10)ml/時で持続点滴を開始するが、年齢や循環動態に応じて(体重÷20)ml/時で開始することもある。
開始量の3倍量まで増量可。
特徴:鎮静効果が切れやすく、抜管などがスムーズに行える。鎮痛作用はない。脂肪製剤なので感染には極力注意が必要。重篤な合併症として、横紋筋融解症・悪性高熱類似症状に特に注意が必要である。
(付録)除細動時の麻酔薬
CCUでは現在ラボナール(チオペンタール 4ml=100mg)を、麻酔導入量(4mg/kg)の半分の
2mg/kg(体重50kgの方で100mg)を基準にして使用している。重症の気管支喘息がある場合は禁忌である。ディプリバン(プロポフォール)は喘息患者にも使えるといわれているが、除細動に使用した経験は当施設ではない。文献的にはチオペンタールもプロポフォールも麻酔導入量を用いるとする施設もある。プロポフォールに関しては1〜2mg/kg(体重50kgの方で50〜100mg)を用いたとの報告が多いが、血圧低下が起こりやすいことを考えるとより少量を使用する方が安全と思われる。
 
CCU緊急薬(PCIや心肺蘇生時に使用)TOPへ
A.リドクイック(静注用リドカイン、prefilled syringe) 5ml=100mg
心室性期外収縮や心室頻拍に対して、50mgづつ静注。
B.アトクイック(硫酸アトロピン、prefilled syringe) 1ml=0.5mg
徐脈に対して0.5〜1mgづつ静注。
C.20倍ノルアドレナリン(希釈ノルアドレナリン) 20ml=1mg
ノルアドレナリン1A(1mg/1ml)を生食でトータル20mlに希釈、1〜2mlづつ静注。
D.ミリスロール(ニトログリセリン) 1ml=0.5mg
E.生理食塩水20ml フラッシュ用
A〜EはPCI時に必ず用意しておく。
これら以外にも心肺停止など、緊急時に使われる薬剤があります。
F.エピクイック(ボスミン、prefilled syringe) 1ml=1mg
心肺停止時、1Aづつ静注。
20倍プロタノール(希釈プロタノール) 20ml=0.2mg
プロタノール1A(1mg/0.2ml)を生食でトータル20mlに希釈、アトクイック無効の徐脈に対して1〜2mlづつ静注。
H.コンクライトMg(硫酸マグネシウム) 20ml=2g
TdPや心室頻拍に対して10mlを2−3分かけて静注。
I.メイロン(7%炭酸水素ナトリウム)
Acidosis補正用
 
硝酸薬(血管拡張作用+冠拡張作用)TOPへ
ミリスロール(ニトログリセリン) 10ml=5mg
投与方法:0.2μg/kg/分で開始、0.2づつ増量、最大2.0μg/kg/分まで。
禁:緑内障
ミリスロールは原液のままで使用する。
投与量は ml/時
0.2μg/kg/分 0.4 0.6 0.8 1.0 1.5 2.0
40kg 1.0(≒0.96) 1.9 2.9 3.8 4.8 7.2 9.6
50kg 1.2 2.4 3.6 4.8 6.0 9.0 12.0
60kg 1.4(≒1.44) 2.9 4.3 5.3 7.2 10.5 14.4
70kg 1.7(≒1.68) 3.4 5.0 6.7 8.4 12.6 16.8
 
カテコラミン(α、β受容体刺激作用)TOPへ
A.イノバン(ドパミン) 5ml=100mg
B.ドブトレックス(ドブタミン) 5ml=100mg
C.ノルアドレナリン(ノルエピネフリン) 1ml=1mg
D.ボスミン(エピネフリン) 1ml=1mg
E.プロタノール-L(イソプレナリン) 1ml=0.2mg
受容体刺激効果の比較
β受容体 β受容体 α受容体 ドパミン受容体
収縮力増強 心拍数増加 末梢血管拡張 末梢血管収縮 利尿作用
イノバン +++ ++ あり
ドブトレックス +++
ノルアドレナリン +++ +++
ボスミン +++ ++ ++ +++
プロタノール +++ +++ +++
投与方法:
イノバン・ドブトレックス
強心薬としてよく使われているのはこの2剤である。特にイノバンはドパミン受容体刺激作用(
2μg/kg/分以下から)による利尿作用があるため、頻用されているお薬である。2μg/kg/分を越えるとβ受容体刺激作用が強くなり、5μg/kg/分以上ではα受容体刺激作用が優位になってくる。一般に投与量はイノバン・ドブトレックスとも1〜5μg/kg/分、最大20μg/kg/分である。
(例)
1μg/kg/分=1ml/時にするために希釈方法を体重別に変えます。
イノバン/ドブトレックス 生理食塩水で希釈したトータル量
40kg 100mg 40ml
50kg 150mg 50ml
60kg 200mg 55ml
70kg 200mg 48ml

ノルアドレナリン

強力なα受容体刺激作用により血圧を上昇させる。主に血圧の維持に用いられる。
0.05〜0.5μg/kg/分。
ボスミン
主に緊急蘇生時に用いられるが、超重症心不全にも使用されることがある。
0.05〜0.5μg/kg/分。
0.1μg/kg/分=1ml/時にするために希釈方法を体重別に変えます。
ボスミン/ノルアドレナリン 生理食塩水で希釈したトータル量
40kg 6mg 25ml
50kg 9mg 30ml
60kg 9mg 25ml
70kg 13mg 30ml

プロタノール

心拍数が著明に増加するため、強心薬としては用いられず、高度除脈や完全房室ブロックに用いられる。(CCU緊急薬を参照)
 
PDEIII阻害薬(強心作用+血管拡張作用)TOPへ
A.コアテック(オルプリノン) 5ml=5mg
One Shot:10μg/kg 5分間で
Drip:0.1〜0.4μg/kg/分
B.ミルリーラ(ミルリノン) 10ml=10mg
One Shot:50μg/kg 10分間で
Drip:0.25〜0.75μg/kg/分
C.アムコラル(アムリノン) 20ml=100mg
One Shot:1mg/kg 3−5分間で
Drip:〜15μg/kg/分
アムコラルは血小板減少症が重大な副作用であるが、静注効果を試したいときには使いやすい薬剤である。他の2剤には血小板減少症は認められていない。スワンガンツ カテーテル監視下に用いるのが原則である。
(例1)
コアテック2A+生理食塩水30ml(トータル40ml)

投与量は ml/時(ミリスロール原液の初期投与量に合わせてみました。)

0.1μg/kg/分 0.2 0.3 0.4
40kg 1.0(≒0.96) 1.9 2.9 3.8
50kg 1.2 2.4 3.6 4.8
60kg 1.4(≒1.44) 2.9 4.3 5.3
70kg 1.7(≒1.68) 3.4 5.0 6.7

(例2)
ミルリーラ原液

投与量は ml/時

ボーラス 50μg/kg 0.25μg/kg/分 0.50 0.75
40kg 2.0 ml 0.6 1.2 1.8
50kg 2.5 ml 0.75 1.5 2.25
60kg 3.0 ml 0.9 1.8 2.7
70kg 3.5 ml 1.05 2.1 3.15
 
心房性Na利尿ペプチド(利尿作用+血管拡張作用)TOPへ
ハンプ(カルペリチド) 1V=1000μg(粉末))
禁:重篤な低血圧、心原性ショック、右室梗塞、脱水
投与方法:0.1〜0.2μg/kg/分
(例1)
0.1μg/kg/分=1ml/時にするために希釈方法を体重別に変えます。
ハンプ(バイアル) 蒸留水で希釈したトータル量
40kg 7V 29ml
50kg 9V 30ml
60kg 10V 28ml
70kg 12V 29ml
 
(例2)
ハンプ5Vを蒸留水で希釈、トータル40ml
投与量は ml/時
0.05μg/kg/分 0.1 0.2
40kg 1.0(≒0.96) 1.9 3.8
50kg 1.2 2.4 4.8
60kg 1.4(≒1.44) 2.9 5.3
70kg 1.7(≒1.68) 3.4 6.7
 
緊急降圧(急性大動脈解離の初期治療に)TOPへ
カルシウム拮抗薬の持続・ボーラス投与+β遮断薬のボーラス投与を行う。静注用β遮断薬は昔からあるインデラル(プロプラノロール)しかなく、選択性はない。そのため、気管支喘息の有無は必ずチェックしたい。また心機能、伝導障害もきっちりチェックしておきたい。また、急性大動脈解離の場合、鎮痛薬の投与も重要である。

ペルジピン(ニカルジピン) 10ml=10mg
まずは、ペルジピン原液を2ml/時で開始、必要により1ー2mlを早送りし、増量していく。大体15〜20ml/時くらいまで。

インデラル(プロプラノロール) 2ml=2mg
ペルジピンに加え、1mg単位でボーラス投与を行う。心拍数を観察しながら。

ヘルベッサー(ジルチアゼム) 1V=50mg(粉末)
10mgを1−3分で静注、5ー15μg/kg/分で持続点滴する。
1Vを5mlに溶かして、1ml=10mgにして、20−30ml用意する。
投与量は ml/時
5μg/kg/分 10 15
40kg 1.2 2.4 3.6
50kg 1.5 3.0 4.5
60kg 1.8 3.6 5.4
70kg 2.1 4.2 6.3
房室・洞房ブロック、徐脈、陰性変力作用に注意。
(尾鼻正弘 大鹿裕之)