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筑波大学麻酔科研修の手引き

12. 開胸手術 (肺外科・食道全摘) の麻酔
筑波大学麻酔科 編


開胸手術 (肺外科・食道全摘) の麻酔

	麻酔医は、気道を手術術者と共有して管理するので、術前、術中、術後に術者と緊密な情報交換
	を必要とする。

(1) 術前回診
	一般の注意点に加えて、心肺系の評価を厳密に行うこと。
	1) 	日常生活の程度、喫煙歴、喀痰量
	2) 	胸部X線写真 : 気管の走行、太さ、狭窄の有無、肺陰影、無気肺、横隔膜
	3) 	心電図 : 不整脈、虚血性変化、必要なら負荷試験・心エコーを指示すること。
	4) 	動脈血液ガス
(2) 前投薬
	1) 	H2拮抗薬
	2) 	抗不安薬 : 高齢者、衰弱者、気道狭窄の患者では減量または投与しない。
	3) 	硫酸アトロピン : 分泌物が多いときはむしろ導入前に静注した方がよい。
(3) 準備
	1) 	通常の気管内チューブに加えて Broncho-Cath を準備する。
	* 	サイズ(35, 37, 39Fr)は胸部X線などを考慮して決定する。 
	* 	身長150cm以下のとき (特に女性)は Broncho-Cath は入らないことが多い。
	2) 	気管支ファイバースコープ、光源
	3) 	Aライン、CVP、必要に応じてSwan-Ganz
	4) 	ETCO2モニター、パルスオキシメータは必須
	5)	 術野挿管するときは滅菌されたF回路。
(4) 麻酔方法
	1) 	頚部 (胸部) 硬膜外麻酔+GO(I) 
	2) 	最近は気管支内挿管が標準的になっている。
	3) 	術中の筋弛緩薬は横隔膜の動きをとめ、人工呼吸を容易にし、Buckingを起こさせないため、
		必須である。
(5) 麻酔導入の実際
	1) 	患者入室後、ECG・血圧・パルスオキシメータ、静脈ライン (太い静脈を確保) 
	2) 	患者を側臥位にして頚部 (胸部) 硬膜外麻酔(1.5%キシロカイン+20万倍ボスミン) 通常、
		テスト量3mlの後、7ml追加。
	3) 	硬膜外麻酔効果発現までに、Aラインを挿入し、記録及び血液ガス測定。
	4) 	全身麻酔の導入 : 十分脱窒素をしたのち気管内挿管 (気管支内挿管) 。
	* 	静脈麻酔薬 (イソゾール・フェンタニル)、筋弛緩薬 (マスキュラックス)
	* 	呼気炭酸ガスモニターは必須
		気管内チューブの確認 : 気管支鏡
		麻酔維持 : 人工呼吸 酸素+(笑気)+(イソフルレン)+(フェンタニル)
	5) 	右内頚静脈から中心静脈ライン (圧測定用)
	6) 	手術体位 (側臥位) に変換するとき麻酔医が指揮する。
	* 	体位変換時は頭を前屈させて気管支内チューブが気管支から抜けないようにする。
	*	手術開始前に胸部聴診、気管支鏡を用いてチューブの位置の確認

(6) 手術開始後の麻酔管理
	1) 	筋弛緩薬を継続投与する。
	2) 	気管内の分泌物や血液を吸引する。
	3) 	開胸直前に胸膜を開ける時は用手的人工呼吸とし気道内圧をさげメスで肺損傷が生じないよう
		に換気する。
	4) 	片肺換気前に血液ガスを測定し、吸入気を50%以上の酸素濃度にする。
	5) 	片肺換気後5分程度で血液ガスの測定、特に低酸素血症に注意する。
	*	 PaO2が100mmHg以下であれば酸素濃度をあげる。
	6) 	パルスオキシメータの値が95%以下は注意する。
	* 	90%以下は両肺換気  患側に酸素を吹奏したりPEEPをかける。
	7) 	手術操作によって気管支は伸びたり気管内チューブとの位置関係が変化する。
	8) 	手術操作で気道を術者が圧迫牽引してBucking、神経反射 Vagoreflex、心臓圧迫、大出血など
		が起きることがある。
	9) 	気道内圧が変化したら要注意。分泌物や気管支痙攣に注意する。
	10)	 気管内挿管の場合、気管支断端が切られて開放されたときは純酸素をフラッシュして気管支内
		に血液が流れ込むのを防ぐ。
	11) 	外科の操作にあわせて肺を換気する。虚脱させたり膨らませたりする。
	12) 	閉胸後胸腔ドレナージチューブがチェスト・ドレナージユニットに接続され胸腔内圧が陰圧にな
		るまでは陽圧換気とする。
	13) 	自発呼吸に戻す前に肺を十分に膨らませる。
(7)  麻酔の終了
	1) 	手術終了後胸部X線写真をとり、ドレーンの位置、肺野の状態、各種チューブの位置を確認する。
	2) 	自発呼吸下、純酸素の換気条件で血液ガスをとり、PaO2 350mmHg以上、PaCO2 40mmHg台であれ
		ば抜管可能と考えるが、換気量、意識の回復状態、痰の喀出の状態などを見て総合的に判断す
		る。
	3)  	食道全摘術後は、開腹開胸手術であり、術後1日の陽圧換気は術後の回復を早めるようなので
		気管内挿管で帰り術後人工呼吸とする。 
		(開腹術中に投与した水分が肺には多すぎるようである) 

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