病原性大腸菌O-157による出血性大腸炎

 

宮崎市郡医師会病院 救急治療部

 

 

目次

 

 

 

1.感染した場合の症状

2.感染した場合の対処方法

3.感染予防策

4.病原性大腸菌O-157について

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.感染した場合の症状

  潜伏期は1〜10日(平均は4〜8日)と一般食中毒に比べてかなり長い。感染すると、一定の潜伏期の後、下痢、吐き気、嘔吐、 腹痛など一般の食中毒と区別がつかないような症状で始まる例が多い。10%程度の例では、悪寒、発熱さらに上気道感染症状を伴うなど風邪と間違えるような症状で始まることもある。やがて典型的な例では、血便が出だし、鮮血様の血便となる。少し遅れて(数日〜2週間以内に)10%の症例に溶血性尿毒症症候群(HUS)血栓性血小板減少性紫斑病、さらに痙攣や意識障害など脳症を呈する例もあり、死に至ることもある。いずれも本菌の産生するベロ毒素の作用(本質的には蛋白合成阻害により、標的細胞を殺す)による。子供や老人の場合は、重篤になりやすい。死亡率は500〜1,000人に1人程度である。

 

2.感染した場合の対処方法

 

 下痢止めなどは服用させない.

 

  無理に下痢を止めると腸内に病原菌を閉じ込め異常増殖させ、その結果ベロ毒素を大量に産生させるため、病気を悪化させることになる.補助療法の基本は、下痢に伴う脱水症の是正である。ブスコパンやロペミン等の止痢剤は使用しない.この際、電解質バランスの調整も重要である.乳酸菌製剤(ビオフェルミンやラックビー,エンテロノンRなど)の経口投与を行う.

 

 抗菌剤投与はなるべく早期に行う.

 

  早期の抗生剤投与は有効なので、早期診断・早期治療を心がける.なるべく病初期,できたら血便が見られる前に便培養提出後ホスミシン100mg/kg/dayもしくはタリビッド6錠(600mg)/3の内服を開始する(小児にはホスミシンドライシロップを使用する).二日以内に症状の改善が見られる.使用期間は3〜5日とする.

 

 溶血性尿毒症症候群(HUS)や血栓性血小板減少性紫斑病に対する処置

 

  HUSの初期には乏尿となり,浮腫を来たし,尿蛋白陽性,潜血反応陽性人なり,血小板数が低下し,白血球が増加する.LDHが上昇し,血清ビリルビン値も増加する.破砕状赤血球を伴った貧血・血小板減少・腎機能障害を示せば,HUSと診断される.血漿交換(血中のベロ毒素の除去効果も期待される)と共に透析療法(人工腎、腹膜透析)の導入時期を誤らないことが必要.しかし血漿交換に対しては不必要だとする意見もあるし,BUNが100mg/dlぐらいまでは透析をしないでよいと言われている.

 

3.感染予防策

 

  一般的には、食中毒の予防の基本を守ることが大切で,

 

 (1)できるだけ加熱調理すること

 

  この場合、菌を死滅させる温度の目安は最低75度1分間以上の処理であるが、常に温度をモニターして調理する わけでないので、100度を目指して調理するのが無難である.また低温条件には強く,家庭の冷蔵庫でも生き残る菌が有ると言われている.酸性条件にも強く,pH3.5程度でも生き残る.水の中では相当長期間生存すると言われている.

 

 (2)加熱直後に食べること

 

  調理で大部分が死んだとしても一部の菌が生き残っていることも考えられるので、保管中にこれが再増殖して食中毒を起こすことが有り得るからである。

 

 (3)まな板、ふきん、手などを介した2次汚染の可能性にも注意が必要

 

  肉など食品材料にはふつう注意がはらわれるが、原材料中の食中毒菌がまな板や手を介して調理済み食品を汚染することで食中毒を起こしたケースも多いので、注意が必要で ある。

 

 (4)岐阜でのO−157食中毒の原因食品として、おかかサラダが疑われている

 

  堺市での集団食中毒では,共通の食材としてカイワレ大根の可能性が示唆された.サラダを加熱調理するわけにいかないので、生食用の野菜は流水でよく洗い、できるだけ汚染している菌を洗い流すこと.こうすることで、発病に至る菌数以下にすることができる。

 

4.病原性大腸菌O-157について

 

  この菌は食中毒菌の中でも感染力が特に強い。一般の食中毒原因菌の場合は10万〜100万個以上の菌を食べないと食中毒は 発症しないが、この菌の場合は数100〜1,000個で発症すると 考えられている。このためふつう食中毒は人から人へ伝染することはないが、この菌は伝染する可能性があるので注意が必要である。特に、O-157感染者の下痢便中には多量で高濃度の菌が含まれているので、排便の後始末には注意が必要である。子供の場合は手洗いも不十分に なりやすく、二次感染の原因となりやすいので注意を要する。家庭で 患児の看護をする場合には一般的な手洗いの他に消毒剤(逆性石鹸や消毒用アルコール・両性界面活性剤など)の使用も勧めたい。汚染が考えられる下着も患者の物は、消毒剤(家庭用漂白剤)や数分間の煮沸の処理した後に洗濯するのがよい。