麻酔プロトコール

 

宮崎市郡医師会病院 救急治療部

 

目次

 

 

 

 

1.麻酔の注意点  

2.局所麻酔   

腰椎麻酔,Saddle block,Blood patch,硬膜外麻酔Epi-Spinal(硬膜外ー腰椎麻酔併用)

 

3.全身麻酔   

麻酔前投薬,全身麻酔の挿管,新生児の挿管,筋弛緩剤

 

4.全身麻酔の導入   

   

*    Priming principleー分割投与法    

*    Rapid Induction    

*    Slow Induction    

*    いわゆる“用意ドン麻酔”   

 

5.ケタラール麻酔  

6.術中・術後の輸液管理

 

 

 

 

 

1.麻酔の注意点

  麻酔において一番注意しなければならないことは、絶対の安全性である。麻酔においては、大丈夫だろうという推定による楽観論は許されない。麻酔では絶対に失敗はしてはならないのである。特に全麻覚醒時の抜管は遅めに行い、抜管の基準を自発呼吸の強さでは判断せず、全身的な筋力が回復したかどうかで判断する(特に離握手の力で判断する)。拔管を急ぐ必要は何もない。呼吸が弱いからといって経鼻エアウエイを使用することははナンセンスである.心配であれば、挿管したまま病室に帰すか、呼吸そのものが弱ければ、気長に人工呼吸器管理を行えば良いだけのはなしである。

 

  一旦麻酔から覚醒したと判断して病棟に帰室しても、主治医及び麻酔担当医は必ず患者の呼吸状態・意識レベルをチェックし、必要有ればパルスオキシメーターを装着するか血液ガスを測定し、痛み刺激に対する反応が鈍くなったり、応答が悪くなったり、呼吸回数が減少し、痰の喀出を全くしなくなったり、血液ガスにて炭酸ガスが貯留(PCO2が50mmHg以上)するようであれば、すぐさま再挿管して麻酔より患者が完全に覚醒するまで人工呼吸器による調節呼吸を行う。現在では術中のモニターが進歩したため、抜管の基準としてセボフルレン・イソフルレンや笑気の濃度がゼロになり、カプノメーターでCO2が40mmHg以下であることを確認する必要がある。

 

2.局所麻酔

腰椎麻酔

 

  腰椎麻酔では、有効な鎮痛効果がでるまでは、何回でもやり直す。最初から皮切に局麻を必要とするようでは却って術中の操作に時間がかかり、必要以上の時間を浪費するものである。やり直し時には前回と同量かやや多めの量を使用し、前回の使用量の事は全く考えなくともよい。10分から15分経過すると局麻剤はすでに固定しているからである。

 

  腰麻剤としてはhyperbaricのネオペルカミンSが使用しやすい.通常の虫垂切除術では術中の腸管の牽引による嘔吐反射・腹痛を防ぐために剣状突起(Th7)まで効かせることを目標にする。3-4腰間より25G針で穿刺する。初心者は3-4腰間のつもりで4-5腰間を穿刺していることが多いので腹部単純写真で腰椎の位置を見て穿刺部位の再確認を行っておく。腰麻の量は年齢と身長で決定し、体重は無関係である.145cmの成人で2.0ml160cm2.5ml175cm以上では3.0mlを使用する。虫垂切除時は,10分経っても臍部まで効いてこなかったら、再度、同量+0.1〜0.2mlを繰り返す。子供の場合は小学校に入る前だったら原則として全麻挿管にて行うが、身体が大きく、聞き分けがよかったら幼稚園生でも腰麻で行い得る。7才を過ぎていたら原則として腰麻で行い、110cmの小学校1年生で1.0ml120cm1.1〜1.2ml130cm1.2〜1.3ml140cm1.4〜1.5mlを使用する。小学校上級生〜中学生の場合にはその身長と身体の発達(腰椎の大きさ)を腹部単純写真を見ながら判断して腰麻の量を決定する。いまだに腰麻の量を体重で計算する人がいる.体重で計算する根拠は何もないことを知るべきである.

 

  ヘルニア等の鼠径部の手術では(Th10)まで効かせることを目的にし、虫垂切除時の8割の量を注入する。イレウスや創閉鎖などで上腹部切開まで行う可能性があるときは乳頭ライン下部(Th5)まで効かせることを目標に虫垂切除時の2割り増しの量を注入する.

 

  腰麻時の血圧低下に対して、若い人であればラクテックの負荷を行い,必要に応じてエホチール等を使用するが,高齢者では容量負荷は余りかけず、昇圧剤で対処する。エホチール1A(=10mg)を9mlの生食に混ぜて10mlとし、1〜2mlずつ(1〜2mgずつ)静注するが、それでも血圧の低下が持続するときにはエホチール1A(=10mg)の皮下注かエフェドリンの1/2〜1Aの皮下注を行う.低血圧が持続するときにはドーパミンの持続点滴を行うほうが安全である.

 

  術中に腰麻が切れてきたらソセゴン・セルシンを十分量使用して寝かせるようにするが、高齢者であればセルシン5mg静注でも十分入眠する。

 

Saddle block

 

  肛門周囲膿瘍や内痔核の手術の時には、Saddle blockで十分である。患者を坐位にし、第3or4腰間から腰麻を行うが、1.5〜2.0mlで十分効果がある。腰麻後、5分間坐位を保ち、その後に体位変換する。

 

Blood patch

 

  腰麻後頭痛23ゲージ針を用いると約4〜5%の症例に、25ゲージ針を用いると1%の症例に出現するため,通常の腰麻には25ゲージ針を使用することを基本とする.手術後、3〜4日経っても頭痛が改善しない場合にはBlood patchを考慮する。まず硬膜外針を腰麻した部分より1椎体下部の第4-5腰間より上向きに挿入し、それを硬膜外腔まで導く。そこで自家血を10ml採血し、硬膜外腔に注入する。その後、2時間は仰臥位を保つ。2〜3時間で頭痛は95%の症例で消失する。

 

硬膜外麻酔

 

  基本的に全麻症例には全例に硬膜外チューブを入れる。現在当院では主として、術中・術後にレペタンを硬膜外に入れ、術後の疼痛管理をするために使っている。全麻中の併用は血圧低下を生じ、昇圧剤や輸液の調節が難しくなり,腸蠕動を亢進させるためあまり使用していない.

 

 胸部の手術においては、第5肋間にて開胸することが多いため、第7〜8胸椎よりpara-medianにてカテーテルを頭側に4〜5cm進ませる。

 

 上腹部の手術においては10〜11胸椎より上方に4〜5cm入れ、チューブ先端が第8〜9胸椎に来るようにしている。

 

 下腹部の手術においては1〜2腰椎より上方に4〜5cm入れ、チューブ先端が第10〜12胸椎に来るようにしている。

 

  胸椎の場合にはpara-medianを基準とするが、腰椎ではmedianからでも出来る。

 

  術後の鎮痛剤として用いる場合には、手術終了の30分前に硬膜外チューブよりレペタン0.2mg+生食6〜10mlを注入する。硬膜外注入では2mlで1椎間効果がある。70歳以上の高齢者はレペタンの量を半量とする。

 

  硬膜外チューブからのレペタン注入の効果持続時間は約12時間である。術後の鎮痛剤として使用する場合には、最初の1回を術中に覚醒30分前に使用し、その後は12時間毎にレペタン0.2mg+生食6〜10mlで硬膜外注入を術後2〜3日間行い、除痛を行って痰喀出をスムーズに行うほうがよい。

 

Epi-Spinal(硬膜外ー腰椎麻酔併用)

 

  時間がかかりそうな再発ヘルニアや創閉鎖・イレウスなどの手術の場合で、全麻をしたくないか若しくは全麻をするほどでもない手術の場合には、腰椎麻酔と硬膜外麻酔とを併用する。まず硬膜外麻酔のチュービングを行ったあとに、腰椎麻酔を行う。腰椎麻酔が切れそうになったら硬膜外麻酔で麻酔を継続する。下腹部の手術で腰麻の補助として使う場合には、若者には2%カルボカインを10〜14ml使用するが、高齢者には6〜8mlで十分である。全身麻酔に比し、術後に呼吸管理の必要がなく、患者さんも楽である。硬膜外麻酔を主として行う場合には最初からドーパミンを併用していたほうが血圧の管理がしやすい。

 

3.全身麻酔

麻酔前投薬

 

  手術場搬入30分前に前投薬の筋注を行うが,緊急手術例では手術場に搬入後,通常量の半量を静注で行う.副交感神経遮断剤としては、通常は硫アトを使用するが、乳幼児では多めに、年寄りでは少なめに使用する。例として1才では0.1mg、2才では0.2mg、3才では0.3mg、4才では0.4ng、5才では0.5mg、6才〜70才までは0.5mg、70才台は0.4mg、80才以上は0.3mgを使用する。緊急手術例では手術場に搬入後0.3mgを静注する.乳幼児などで、発熱があり、頻脈があるときには脈拍上昇を避けるためにスコポラミンを同量使用するが、スコポラミンは年寄りには妄想を起こすため使用しない。腰麻の症例でも術中に徐脈となることがあるため原則として使用し、途中で全麻に切り替わる可能性のある症例の場合には必ず使用しておく。

 

  鎮静剤としては、若ければセルシン10mg IMもしくはアタラックスP50mg IMを使用し、70才以上の年寄では、セルシン5mg IMもしくはアタラックスP25mg IMを使用する。

 

全身麻酔の挿管

 

  全身麻酔時にはPre-Oxygenation5分間行う。硬膜外チューブ挿入が終わり、仰臥位にしたらすぐに酸素マスクを顔にあてるとよい。挿管チューブの準備等をしている間に、5分間はすぐに経つ。

 

  挿管は原則としてはスタイレットを使用せずに行う。喉頭展開が十分で、声門が良く見えればスタイレット無しで十分に挿管出来るし、スタイレットがないほうが挿管時に喉頭-声門に無理を強いない。声門が良く見えないのは不十分な喉頭展開によることがほとんどであり、喉頭鏡の先端を動かして調節することにより、声門を十分な視野に確保することが出来る。挿管時には頭部後屈はあまり行わないほうが声門は良く見える。頭の下に3〜5cm程の枕を入れ,それから下顎挙上を行えば十分に喉頭展開できるし、その方がSniffing positionを取りやすい。それでも喉頭蓋のため声門がよく見えなければ、自分で上から甲状軟骨を押し、それで声門がよく見える位置を確保し、介助者にそこを押してもらう。それでも挿管チューブの先端と声門との位置が合わず、声門が見えにくければ、先端をJ-Shapeに曲げたスタイレットを入れ、挿管する。挿管時には挿管チューブが声門を通過したら、チューブを押し込みながら喉頭展開を徐々に解除すると、先端が気管壁に当たらず、スムーズに挿管できる。挿管チューブの固定は歯列で女性20cm前後男性22cm前後で良い。挿管後は余剰なチューブを切り、26cm位に短くしておくと固定後に邪魔にならず、折れ曲がり等の事故が起こりにくい。

 

新生児の挿管

 

  新生児の全麻の挿管の時はawake intubationにて行う。新生児は挿管チューブが入りづらい事があり、awakeでやっていれば自発呼吸下に何回でもやり直しが効き安全である。 

 

筋弛緩剤

 

  非脱分極性の筋弛緩剤としてミオブロックとマスキュラックスが有り、症例に応じて使い分けるが、今はほとんどマスキュラックスを使用している。ミオブロックの作用時間は40分〜1時間であり、マスキュラックスの作用時間は20分〜30分である。術中の使用法としては最初に1+3mg使用し、その後は30分おき位を目安に1〜2mgを使用する。リバースとして、筋弛緩剤の使用総量が4mg以内の時は硫アト1Aとワゴスチグミン2Aで良いが、それ以上使用したときには硫アト2Aとワゴスチグミン4Aを使用する。リバースは自発呼吸がある程度出てから使用し、限度量は硫アト3A・ワゴスチグミン6Aであり、それ以上は使用しない。限度量を使用しても自発呼吸が弱いときには人工呼吸器使用にて気長に自発呼吸の回復を待つ。

 

  マスキュラックスは肝に取り込まれ、胆汁中に排泄される。蓄積作用があまり認められないが、数日にわたる投与では代謝産物が蓄積し、遷延性ブロックを起こすことが報告されている。心血管系に及ぼす影響はほとんど認められない。ヒスタミン遊離作用は非常に少ない。胎盤通過は少なく、産科麻酔にも安全に使用できる。などミオブロックより副作用が少ないため、肝機能が正常な人の通常の麻酔ではできればマスキュラックスを使用したほうがよい。しかし肝障害患者では頻回投与で持続時間が極端に延長することがある。閉塞性肝胆道系疾患患者ではその排泄が極端に延長することがある.腎不全患者でも半減期が延長するため、注意する必要がある.

 

4.全身麻酔の導入

  全身麻酔の導入は、昔はRapid Inductionと、マスクもしくはソセゴン-セルシンを併用するSlow Induction、もしくはFull stomach時にはCrash inductionにて行っていたが、最近ではマスキュラックスによるPriming principle(分割投与法)を主として使っている。

 

Priming principleー分割投与法

 

  麻酔導入前に挿管に使う1/5〜1/4量のマスキュラックスの0.02mg/kgを静注する(普通は1mg)。3分間待ってマスキュラックスの0.06mg/kgを追加投与(普通は3mg)し、その効果が出始めたら、イソゾールを5mg/kg静注し、通常の様に導入・挿管する。マスキュラックスは追加投与の1〜2分後(平均90秒)には筋弛緩が得られ、挿管可能となる。この原理は、あらかじめ投与した筋弛緩薬が、受容体の多くを効果発現域値近くまで占拠するため、追加投与により受容体が速やかに飽和されることによる。サクシンを使用しないため悪性過高熱を起こさない。緊急時の全麻も原則としてこれで行い、Crash Inductionは出来るだけ行わない。

 

Rapid Induction

 

  Rapid Inductionではイソゾールを5mg/kg(年寄りやショックの患者では3〜4mg/kg)をゆっくり静中後に、睫毛反射が消失したら、軽く補助呼吸しながら(圧が10mmHgを越えないように)サクシンを1mg/kg(小児では多めに2mg/kg)静中し、筋攣縮が足先まで行き、消失するのを待って挿管する。筋攣縮が消失した直後に一番筋弛緩が効いている。(しかしアメリカではサクシンの小児及び青年期への使用が禁忌とされるようになったため、今後はサクシンの使用は控えたほうがよいかも知れない)

 

Slow Induction

 

  小児の鼠径ヘルニアなどにはマスクを使用してのSlow Inductionで行うが、セボフレンでは2〜3呼吸毎に0.5%ずつ上げ、3〜4%で十分な麻酔深度が得られ、維持は1.5〜2.5%で行う。

 

  喘息患者などへのソセゴン-セルシンを使用してのSlow Inductionでは、通常はマスキュラックスの分割投与後、ソセゴン30〜45mg静注後、セルシンを20mg静注し、入眠したら挿管するが、高齢者ではその半量のソセゴン15mg、セルシン10mgで十分な入眠が得られる。

 

  心筋梗塞・狭心症・心不全の既往のある人で大切なのは血圧の変動を極力押さえ、特に低血圧には絶対にしないことである。朝6時にミリスロールテープもしくはニトロダムテープを貼り、手術場に搬入されたらミリスロールとドーパミンの持続点滴を平行して行う.導入はソセゴン15mg、セルシン10mgを静中してHeavy sedationを行った後、イソゾールは通常の半量を使用して挿管する。ミリスロールテープは経口摂取が出来るようになるまで12時間毎に張り替える。ニトロダムテープは24時間毎で良い。

 

  術中の高血圧に対しては麻酔深度を深くすることで対処するが,それでも血圧が高い場合にはアダラート5〜10mgの舌下投与かもしくはペルジピンの静注を行う.

 

いわゆる“用意ドン麻酔”

 

  胎児切迫仮死等の緊急帝王切開時の麻酔において用いる。最初に開腹体位(砕石位)を取り、術野の消毒を行い,シーツをかぶせる.この間、麻酔医は7.5Frの挿管チューブの用意,およびPre-oxygenationを行っておく。また食直後であればN-Gチューブを挿入して胃内の減圧をしておく。開腹の準備が出来たら、Priming principle(分割投与法)にてマスキュラックスを静注し,筋弛緩が効いてきたらイソゾール250mgを静注し、入眠したら、すぐに手術を開始してもらう。挿管にあたっては絶対にモタモタしない。挿管後に再度胃管を挿入し、胃内の減圧を行う。帝王切開時には酸素-笑気のみで麻酔を行い、子宮筋弛緩作用のあるイソフルレン・セボフルレンなどの吸入麻酔薬は使用しない。必要があればマスキュラックスの追加投与を行う.

 

5.ケタラール麻酔

  ケタラールは小児の骨折の整復や、熱傷など皮膚疾患の治療などで、短時間で終了し、余り筋弛緩を必要としないが、強い鎮痛効果が必要な場合に用いられる。その他、循環動態にあまり変化を来たさないため、全身麻酔の導入時に使用することもある。単独で麻酔薬として用いる場合には、原則として使用は小児に限る。大人で使用すると悪夢を見て暴れることがある。ケタラール麻酔の合併症は気道分泌物の増加であり、硫アトの前投薬にて押さえられる。

 

・筋注時は筋注用ケタラール(50mg/ml)を使用し、5mg/kgで筋注する。

 

  例:15kgの子供には15kg×5mg/kg=75mg=筋注用ケタラール1.5ml

 

・静注時は静注用ケタラール(10mg/ml)を使用し、1〜2mg/kgで静注し、0.5〜1mg/kgを追加していく。

 

  例:15kgの子供には15kg×1〜2mg/kg=15〜30mg=静注用ケタラール1.5〜3.0ml

 

6.術中・術後の輸液管理

  術中・術後管理の要点は、全身的にはdryに、呼吸管理は十分加湿してwetにというのを原則とする。

 

  教科書的には、術中は1ml/kg/hの尿量を保つように輸液しろと書いてあることが多いが、その量では術中に腸管浮腫を起こし,術後に循環量がオーバーとなり、肺水腫の原因となる。術中・術直後の輸液管理は最低限の循環動態を維持できるだけのdry sideに保ったほうが良い.術中の管理としては尿は出ていさえすればよいと考え、最初から控えめに輸液し、尿が出なくなるようであれば徐々に輸液を増やし、10〜20ml/h位の尿量を維持していればよい。特に、食道癌手術や、PDなど長時間の手術や年寄りの手術では、術後に血圧は保たれているが、クレアチニン・BUNが少し上昇する程度に輸液を絞って管理するほうが術後に肺合併症を来たさない。また術後も輸液管理はdryに行い、手術日は尿量10〜20ml/hが維持出来ればよいと考える。術中・術後に尿が十分出るような管理をすると、術後二日目位からre-filling stageとなり、心機能の悪い老人などでは肺水腫を起こしてくることもある。

 

  しかし大量に出血して血圧が低下することがあり、その時は十分な補液・輸血をしないといけない。報告されるガーゼや吸引で計測された出血量で考えていると、輸液・輸血が遅れ、ショックになることがある。麻酔医は絶えず術野を観察し、報告されている以上の出血が無いかどうか、確認する。特に肝臓の手術とか、整形の骨盤の手術とかは予想外に大量の出血が一度に起こっていることがあるため要注意である。

 

  術中に全身的にdry sideになる結果として、気管内もdryになり、痰が粘調となるため、術後の呼吸管理では,気管内はインスピロン・ネブライザーなどで十分加湿を行い、痰喀出を容易にさせる。また必要に応じてビソルボン等の痰溶解剤を併用する。