中毒プロトコール

 

宮崎市郡医師会病院 救急治療部

 

 

目次

 

 

 

1.農薬中毒の場合

腸洗浄,胃洗浄,強制利尿,DHP

2.パラコート中毒

パラコートの腸洗浄,パラコートの強制利尿,パラコートの呼吸管理,電解質のバランス

3.有機リン中毒(カーバメート系-ランネート中毒を含む)

硫アトの使い方,パムの使い方,有機リン中毒の呼吸管理

4.ラウンドアップ中毒

5.バスタ中毒

6.睡眠薬その他の薬物中毒

7.アセトアミノフェン中毒

8.ガス中毒

一酸化炭素中毒

9.酸・アルカリ等の誤嚥の場合

10.灯油・ガソリン肺炎

 

 

 

 

 

 

1.農薬中毒の場合

  自殺目的で使用される農薬のなかで一番多い農薬は殺虫剤の有機リン剤であり、死亡率が一番高いのは除草剤のパラコート製剤であるが、農薬には成分・製剤としても様々雑多なものが多数あり、それぞれにより対症療法が異なるため、来院時に原因物質の同定・確認を行うことが絶対的に必要である。飲んだと思われる農薬の瓶・袋を必ず持ってこさせ、原因物質の確認を行う。しかし原因物質が何であれ、胃・腸管内に残存しているものを吸収される前に除去することと、すでに血中に吸収されたものを除去することが中毒治療の基本である。原因物質にかかわらず必要とされる基本処置としては、未吸収物質の除去法として胃洗浄・腸洗浄があり、既吸収物質の除去法として強制利尿・DHPがある。

 

 腸洗浄

 

  まず農薬中毒の患者が来院したら、有機リン中毒の場合には意識障害・肺水腫を来していることが多いため,まずは救急外来にて末梢から点滴を確保して硫アトを3〜5A静注し、必要あれば経鼻挿管を行うが、パラコート中毒の場合には全身状態が良好である場合が多いため、すぐに透視台に上げ、クリニーの150cmの十二指腸チューブを先端のバルーンがトライツ靭帯を越える空腸まで挿入する。トライツ靭帯を越えず、十二指腸内でバルーンを膨らませると腸洗浄液が逆流しやすいため、必ずバルーンがトライツ靭帯を越える所まで十二指腸チューブを挿入する。バルーンを約20mlの水にて膨らませ(普通の水道水で良い)、十二指腸にガストログラフィンが逆流しないことを確認しながら、ガストログラフィンを約300ml注入する。ガストログラフィンは優れた下剤であり、経験上、他の下剤よりも一番早く強力な催痢作用を発揮する(1時間以内に大量の水様下痢便が排泄される)。ガストログラフィンの注入が終わったら集中治療室に入れる。意識レベルの低い患者や誤嚥を起こしそうな患者の場合には来院時に経鼻挿管をしておく。

 

  十二指腸チューブ:当院で使用している十二指腸チューブはクリエートメディック株式会社のCLINYバルーンゾンデ(シングルバルーン型21A)18Fr1500mmのものである.このチューブは通常のイレウス管と同様に挿入しやすく,バルーンの先端にのみ側口が有るため,有効な腸洗浄が出来る.

 

  腸洗浄液は吸着剤として活性炭・ケイキサレートを使用し、下剤としてマグコロール・マニトールを使用する。

 

 例としてパラコートの場合は

 

  1.ケイキサレート30g+微温湯500ml

  2.マニトール250ml+微温湯250ml

  3.マグコロール250ml+微温湯250ml

1クールとし、腹満の程度を見ながら持続して行い、尿中パラコート定性反応が陰性化した後も1〜2日間続けて行う。

 

 また有機リン剤をはじめ他の農薬中毒の場合には

 

  1.活性炭30g+微温湯500ml

  2.マニトール250ml+微温湯250ml

  3.マグコロール250ml+微温湯250ml

1クール行い、腹満の程度をみながら、最初の活性炭便がでるまで2.3.の下剤を繰り返し行う。活性炭便が十分でるようになれば腸洗浄は中止してよいが,農薬の剤型が粒剤の時には残存する可能性が有るため通常よりも多めに腸洗浄を行う.

 

  腸洗浄開始後、腸蠕動促進・腹満防止のためプロスタルモンF6時間毎に点滴静注する。

  腸洗浄に使用する微温湯は普通の水道水で良い。大量補液・強制利尿でラクテック・リンゲル液により大量のNa,CLが補液されるため、腸洗浄には無電解質液を使用した方が、経験上、かえって電解質のバランスが保たれる。

 

 胃洗浄

 

  集中治療室にて他の処置が終わった後で、左側臥位にし、大径(10〜12mm)のネラトン型胃洗浄チューブを経口or経鼻にて胃内に挿入し、イリゲーターを使用して胃洗浄を行う。一回につき、約500mlの微温湯を注入し、排液する。農薬の色が取れて、全くきれいになるまで約10Lにて洗浄する。パラコート中毒の場合には微温湯にケイキサレートを5g/L混ぜ、排液中のパラコート定性反応が陰性になるかパラコート色が全く無くなるまで行う。

 

  胃洗浄にて胃内容物を腸内に押し込まないために、胃洗浄は原則として腸洗浄用の十二指腸チューブのバルーンを膨らませた後に行う。胃洗浄は、他の腸洗浄や大量補液・DHPを開始した後の最後の処置として行ってよい。パラコートをはじめ多くの物質が酸性の胃内では吸収されず、腸内ではじめて吸収されるため、この方が合理的であると思われる。

 

 強制利尿

 

  大量補液・大量利尿は腎からのクレアランスの良い物質に対しては非常に効果的な方法である。パラコートも腎からのクレアランスが大きいと言われている。1時間1000〜2000mlの補液を行い、1000ml前後の尿量を得ることが必要である。最初から小量のドーパミンを利尿目的で使うことは有効であり、中心静脈圧を見ながら、適宜ラシックスを併用する。自発呼吸のときは中心静脈圧5cmH2O以下を、人工呼吸器による調節呼吸時には中心静脈圧10cmH2O以下を目標にして利尿剤を使用する。高齢者であれば心庇護のため、最初からジゴキシンを使用し、ジギタリゼーションを行っておく。

 

 DHP

 

  現在のところ絶対にDHPを行わなければならない症例はパラコート中毒のみである.睡眠薬中毒でも薬剤によっては効果的であることが多いが、睡眠薬中毒の場合に一番大切なことは、、呼吸循環動態の維持であり、意識レベルが低ければ、人工呼吸器にて調節呼吸を行い、血圧が低ければ昇圧剤を使って保存的に加療していれば、1〜2日で自然に覚めてくるため、特にDHPは必要としない。例外はアセトアミノフェン中毒であり、アセトアミノフェンの服用が10gを越えていて、服用後8時間以内であれば、DHPを行う。アセトアミノフェンではDHPを回す時間は一本を5〜6時間行えば十分だと思われる。

 

  パラコート中毒のDHP施行時には最初に生食500mlにてプライミングを行い、次いでヘパリン5000Uを加えた生食500mlにてプライミングを行っておく。一旦凝固させるとDHPのカラムを交換せざるを得なくなり、また血小板も低下するため、出来るだけヘパリゼーションを強力に行っておく。回路内凝血をさせるよりも余分のヘパリンを使うほうが好ましい。DHP開始時にはヘパリン5000Uone shotで動脈側に混注し、その後はヘパリンを2000U/hで持続混注開始し、PTTの値が正常値の2〜3倍以上になるように減量していく。通常の使用の場合にはカラムは3〜4時間で交換するが、パラコートの場合には1本目のカラムは4〜6時間使用し、2本目からは6〜10時間使用する。パラコートの場合には実験的にカラムの吸着能が8〜10時間はあるからである。2本目以降の交換時にはヘパリン2000〜3000Uをone shotで側注する。DHPが終わったらプロタミンにてヘパリンを中和させておく。

 

2.パラコート中毒

  パラコート中毒の治療で大切なのは治療の迅速さ徹底さである。いかに早く腸管内に残存するパラコートを体外に出すか、また血中・組織中に吸収されたパラコートをいかに早く血中から取り出すか、の二点がもっとも重要なポイントである。来院時にはそのまま透視台に上げ、すぐに十二指腸チューブを入れるが、その時に点滴を取ってあれば、さしあたり全開にして流しながら処置を行い、点滴を取ってなければそのままで処置を行い、必要であれば透視台にて挿管し、とにかく早目にICUに入室する。

 

  ICUにおける処置の手順は、まず経鼻挿管を行い、誤嚥を防止し、左鼡径部より14Fr・30cmのIVHカテーテルを挿入し、右鼡径部よりDHP用のダブルルーメンカテーテル8インチを挿入する(鎖骨下からしない理由は,引き続き連続DHPを行うため,鎖骨下からでは血腫を作りやすいためである).カテーテルを入れたら、すぐにDHP・大量補液を開始する。ICUに入室した段階で、十二指腸チューブより腸洗浄を開始する。導尿用のバルーンカテーテルを挿入する。これらが済んだ後、左側臥位にして経口にて大径の胃洗浄チューブを挿入し、ケイキサレートを混ぜた微温湯にて胃洗浄を行う。胃洗浄終了後、仰臥位にして経鼻胃管を挿入する。この時までに固形便が出ていなければ浣腸を行い、固形便排泄後、クリニーの注腸用チューブを挿入し、バルーンを水40ccにて膨らませ、固定する。DHPは尿の定性反応が陰性になった後も更に一本追加して行う。原則として24時間以上は持続して行い、出来たら48時間続ける。パラコートの血中濃度が低くなると、すでに組織に取り込まれているパラコートも濃度勾配により血中に逆流してくると言われているため、血中濃度を低くするに越したことはないからである。

 

 パラコートの腸洗浄

 

  ケイキサレートのパラコート吸着能は活性炭の4〜5倍と言われているため、パラコートの腸洗浄はケイキサレート・マグコロール・マニトールを入れる。最初は物理的に腸管内を洗い流すことを主眼にし、最初の下痢便があった後は腸管内に絶えずケイキサレートが有る状態を作る。ある程度の腸麻痺を来たしていても物理的に腸粘膜に付着しているパラコートをwash outすることにより腸管の麻痺は改善してくると言われている。そのためにも最初に注入するガストログラフィンは有効である。腸洗浄は1000ml/h程度で、尿定性反応が陰性化した後も1日〜2日続ける。パラコートは腸粘膜の襞内に4〜5日間は残存すると言われており、腸管内を絶えずケイキサレートで満たした状態を作り、腸粘膜からパラコートを吸収するようにする。

 

 パラコートの強制利尿

 

  パラコートの場合、DHPよりも大事なのがこの強制利尿である。尿クリアランスはDHPのクリアランスよりも大きい。大量補液大量利尿が必要である。さしあたり時間1000ml〜2000mlのラクテックによる点滴を行い、中心静脈圧を計りながら、必要に応じてドーパミンを使用して利尿をはかり、心庇護が必要であればジギタリゼーションを行う。

 

 パラコートの呼吸管理

 

  パラコート患者の場合、酸素投与は絶対禁忌である。原則として来院時に経鼻挿管を行う。最初からパルスオキシメーターを付け、SaO2が90%以下になったら、人工呼吸器にて調節呼吸を行い、必要であればミオブロックやセルシンを使用してセデーションを行う。SaO2が80%以下になったら、PEEPにて陽圧呼吸を行い、PO2で最低40mmHg、SatO2で80mmHgを維持出来るようにする。PEEPを10〜15cmに上げても、SaO2が80%を下回るようであれば、FiO2を徐々に上げていき、SaO2が80mmHgを維持できるようにする。しかし酸素投与を必要とするようになった患者を生存させることは困難である。肺水腫予防のため、DHPが終了したら、ステロイドのパルス療法を開始し、ソルメドロール3g/3静注を3日間続ける。間質性肺炎・肺水腫の状態が持続するようであれば更に持続して使用する。

 

 電解質のバランス

 

  点滴でラクテックを用い、多量のナトリウム・クロールを入れるため、腸洗浄では微温湯を用い、それで高ナトリウム血症になるのが防止できる。またラクテック単独でもカリウムが結構入るため、とくに低カリウム血症は来たさず、カリウム濃度が3.0以上を保っていることが多いが、ケイキサレートも使用するため、低カリウム血症に注意し、カリウム濃度が3.0を切れば、腸管の麻痺や不整脈の発生を防ぐため、カリウム補正をして、カリウム濃度が4.0前後を保つようにしなければならない。

 

4.有機リン中毒(カーバメート系-ランネート中毒を含む)

  有機リン中毒の臨床程度は様々であり、原因物質・飲用量・飲用からの時間により異なってくるため、軽症と重症とに分け、対策を変える。

 

 軽症縮瞳・冷汗のみが症状として現われ、意識が良く、呼吸管理を要しないもの)

 one shotの硫アト・パム静注を数回繰り返すことにより症状が改善し、ICU管理が

 1〜2日位しか必要としない。

 

 重症意識障害・肺水腫があり、気道確保のため挿管を必要とするもの)

  硫アト・パムの持続点滴静注を必要とし、ICUにおける長期の呼吸管理を要する。

 

 硫アトの使い方(1A=0.5mg=1ml)

 

  基準となるのが、瞳孔径(ピンポイントに縮瞳する),発汗(冷汗),徐脈(洞性徐脈となる),気道分泌増加である。最初は硫アトを30分おきに2〜5Aずつ静注し、冷汗が無くなり、気道分泌物が減少し、瞳孔が3mm以上に開いてくるのを指標とするが、瞳孔が開いてくるのが一番遅れる。瞳孔がなかなか開いてこない重症例においては、硫アトを5Aづつ静注するが、それでも瞳孔が開いてこないようであれば、精密点滴セットに入れて、2〜10A/hで持続点滴を行う。重症例でも数日経つと、瞳孔は縮瞳しなくなるが、硫アトをやめると、60回/m以下の徐脈になるようになる。このころには硫アトの投与は瞳孔径ではなく、脈拍を指標とし、脈拍が60回/m以上になるように調節する。

 

 パムの使い方(1A=500mg=20ml)

 

 パラチオン、EPN、ビリダフェンチオン(オフナック)などには有効であり、スミチオンやバイジット、マラソンなどの低毒性有機リン剤に対しても、流涎や痙攣などの症状を軽減し、血液ChE活性を回復する効果がある。

 

  低毒性の有機リン剤やランネートなどのカーバメート剤でも筋力低下や筋攣縮が出現するようであればパムを使用する。

 

 1.軽症例

 パム 2〜4Aを静注し、筋力低下筋攣縮が改善しなければ、更に2〜4Aを静注する。

 2.重症例

初回2〜4Aを静注し、効果がみられなければ、1時間後より微量点滴セットに原液を入れ、3〜20ml/hで持続点滴静注を行なう。

 

 PAMは血中半減期が短いため(半減期1.87時間)、初回静注投与後は点滴静注で投与すべきである。筋力低下や筋攣縮などの症状が残り、長期の呼吸器管理を必要とするときには最低でも1週間は続けるべきである。

 

 有機リン中毒の呼吸管理

 

  重症の有機リン中毒患者では、気道分泌物が多く、長期の呼吸管理を要することが多い。特に高齢者では痰喀出が十分出来ないことが多いため、少量の硫アトの持続投与を続け、抜管を急がないほうがよいし、抜管後も痰喀出が不十分であれば、早めに再挿管し、十分な呼吸管理をICUにて行うほうがよい。

 

4.ラウンドアップ中毒

成分

 

  ラウンドアップは,植物の生育を停止させる除草剤グリホサート41.0%)に界面活性剤ポリオキシエチレンアミン15.0%)を加えた製剤で,毒性は主として界面活性剤の方にあるといわれている.黄褐色の水溶性液体で,ヒト経口推定致死量2ml/kgである.

 

症状

 

  毒作用として粘膜刺激作用消化管刺激作用があり,症状としては吐き気,嘔吐,咽頭痛,腹痛があり,激しい下痢と嘔吐による脱水にてショック状態となるが,意識は正常である.

 

治療

 

  誤嚥に十分注意しながら胃洗浄を行い,十二指腸チューブより吸着剤(活性炭)下剤(マグコロール等)を投与し,腸洗浄(有機リン剤に準じた)を行う.補液を十分に行い,脱水の補正強制利尿を行う.大量服用例には血液浄化法を考慮するが,グリホサートは分子量が小さく、血液吸着ではほとんど除去できず,血液透析で効率よく除去できる.製剤中の界面活性剤に関しては、血液透析と血液吸着のどちらが有効か明確でない.

5.バスタ(グルホシネート)中毒

成分

 

  バスタ液剤は除草剤グルホシネート(GLF)18.5%と界面活性剤30%を含んでいる(同様の除草剤にGLFを8.5%含むハヤブサがある).グルホシネートは速やかに血中に吸収され,1時間後に血中濃度が最高になり,半減期は4時間で,尿からの排泄は良くて90%が尿中に,10%が糞中に排泄される.

 

症状

 

  グルホシネートでは服毒後,8〜38時間の潜伏期を経た後に意識レベルの低下痙攣・呼吸抑制などの症状が出現し,健忘症が出現することがある.臨床ではグルホシネートによる中毒症状遅発性の意識障害痙攣呼吸抑制など)と,界面活性剤による中毒症状粘膜刺激症状循環血液量の減少浮腫循環不全)とが複合した症状を示す.50ml以上の飲用で症状が出現することがあり,100ml以上では症状必発である.

 

治療

 

  初期の症状は少ないが,服毒量の多寡に関わらず入院させ,服毒後48時間は経過を観察する.100ml以上服毒した症例では遅発症状が発現する可能性が極めて高いので,気管内挿管人工呼吸の準備を必ず行う.一般の農薬中毒と同じ十二指腸チューブを使用しての腸洗浄を行い,界面活性剤による脱水の補正をし,強制利尿を行う.

 

6.睡眠薬その他の薬物中毒

  大抵の睡眠薬中毒や精神安定剤中毒において必要なのは、呼吸管理循環管理保温である。胃洗浄と腸洗浄はそんなに重要ではない。市販の睡眠薬は一瓶飲んでもすぐには呼吸停止まで来たすことはないため、全身管理さえシッカリやっておけば特に問題はない。しかし飲んだ薬の種類と量は必ず確認しておく必要がある(特にアセトアミノフェンの含有について)。精神疾患であれば、前医に問い合わせ、精神疾患歴と病名、投薬の種類を必ず確認しておく。

 

  眠剤中毒・安定剤中毒では十二指腸チューブを入れての腸洗浄までは普通、必要としない。胃洗浄・腸洗浄は患者を左側臥位にして、普通の18Frの経鼻胃管にて行ってもよいが、残渣が多い場合や錠剤などが胃内に残っている場合には、大径(10〜12mm)のネラトン型胃洗浄用チューブを使う。十二指腸内に胃内容物を押し込まないように200〜300ccの微温湯にて胃洗浄を行う。胃内が綺麗になったら、活性炭30gマグコロールP一袋or硫酸マグネシウム30〜60gを微温湯200〜300mlに溶かして経鼻胃管より注入し、胃管は抜去する。マグコロールを注入すると嘔吐する人が結構多いため、マグコロールP、もしくは硫酸マグネシウム30〜60gを胃管より注入するほうがよい。

 

  一番大事なのが呼吸管理で、意識レベルが低く、痛み刺激にも反応しないようであれば、誤嚥・無気肺などを予防するため、胃洗浄の前に経鼻挿管を行う。自発呼吸が弱く、低酸素血症・炭酸ガス貯留(PCO2が50mmHg以上)があれば、人工呼吸器による調節呼吸にて呼吸管理を行う。自発呼吸が十分になれば人工呼吸器より外し、意識レベルが上がってきて、喀痰が十分出来るほど元気がでてから抜管する。

 

  意識レベルが低下するような症例では、低血圧を示すことがあるが、ドーパミン・ドブタミン等の昇圧剤や十分な補液をすることにより十分対処できる。挿管が必要であったり、昇圧剤を使うような症例ではIVHラインを入れ、中心静脈圧測定を行いながら輸液管理を行う。

 

  大抵の薬物は腎排泄性であるため、大量補液・強制利尿を行うが、農薬中毒ほど強力に行う必要はなく、200〜300cc/hの補液を行い、100〜200cc/hの排尿が得られる位でよいのではないかと思われる。

 

7.アセトアミノフェン中毒

  睡眠薬や風邪薬の大量服用で問題となるのが、それに含有されるアセトアミノフェンである。アセトアミノフェンの総量が5gを越えるようであれば、十二指腸チューブを挿入し、農薬中毒に準じた腸洗浄(ガストログラフィン・マグコロール・マニトールを使用し、活性炭は使用しない、次に述べるムコフィリンを吸着してしまうからである。)を行い、ムコフィリン(1アンプル=2ml)を十二指腸チューブより注入する。N-Gチューブより注入すると嘔吐を誘発するため、十二指腸チューブから注入するほうがよい。

 

  ムコフィリンの投与は最初は40ml(20アンプル)を、二回目以降は20ml(10アンプル)ずつ4時間おきに1〜3日間投与する。

  アセトアミノフェンの総摂取量が10gを越えていれば、DHPを1本、6時間かけて行う。

  アセトアミノフェンの吸収は早く、4時間で血中濃度がピークに達すると言われている。したがって、ムコフィリン投与やDHPは少なくとも服用してから8時間以内に始めたいし、24時間以降では無効であると言われている。

 

8.ガス中毒

 一酸化炭素中毒

 

  大都市の都市ガスはほとんどが液化天然ガス(LNG)に変わっており,一酸化炭素を含まず,空気より軽い.またプロパンガス(液化石油ガスLPG)も一酸化炭素を含まないが,空気より重い.しかし田舎の都市ガスではまだ昔からの製造ガスを使用しており,高い濃度の一酸化炭素を含んでいることがあるため,その地方の都市ガス会社に問い合わせて成分を聞いておかなければならない.ちなみに宮崎市の都市ガスはプロパンガスとほぼ同じ成分であるが、延岡市・都城市の都市ガスには5〜6%の一酸化炭素が含まれている.

 

  製造ガスの都市ガスによるガス中毒ストーブや薪、練炭などの不完全燃焼でも一酸化炭素が発生し、中毒を発生しうる。一酸化炭素中毒が疑われ、意識レベルの低下があれば、すぐに経鼻挿管を行い、一酸化炭素を追い出すために、人工呼吸器による純酸素の調節呼吸を過換気にて行う。2時間も行えばCOHbは追い出される。意識レベルが全くの清明になるまで純酸素を使用する。

 

9.酸・アルカリ等の誤嚥の場合

  強酸である塩酸を含むトイレ洗浄剤や強アルカリである次亜鉛素酸ソーダを含む漂白剤などを飲んで来た場合、まず注意深く胃洗浄を行う。次いで、胸写・腹単を撮り、食道穿孔・胃穿孔の有無をチェックし、腹痛・腹膜刺激症状出現の有無を観察する。絶飲食とし、マーロックス・アルロイドGを定期的に経口摂取させる。2・3日して食道穿孔・胃穿孔が否定出来たら、圧をかけないようにして注意深く内視鏡を行ない、食道糜爛・胃糜爛の程度をチェックし、食事開始の可否を決める。糜爛や潰瘍が強い場合には2〜3週間して狭窄を来たしてくる場合があるため、長期的なフォローが必要である。

 

10.灯油・ガソリン肺炎

  灯油・ガソリンを誤飲した場合、催吐はさせないようにしなければならない。誤嚥を起こすと激しい化学性肺炎を起こす。肺の陰影が出現する前に高熱が起き,引き続き肺陰影が現れてくる.二次感染防止に抗生剤を使用し,入院させて経過を見る.大量に服用している場合には挿管して気道を確保し、注意深く胃洗浄を行う必要がある。